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2021年6月1週号
農作業の合間にくるみ籠作り - 及位専蔵さん
 三種町川尻地区「くるみ籠工房 蔵」の及位専蔵さん(71)が農作業の合間を利用して手掛ける「くるみ籠」。白神山地の麓や米代川流域から採取したクルミの木の樹皮を丁寧に編み、自然の風合いそのままを生かすことを心掛けている。

 工房内には大・中・小の3サイズの籠と携帯ストラップなどの小物作品が数多く陳列されている。設計図は使わず、型取り用の特木箱を使い全て手作りした。最近は花柄ストラップを付けたり、網代編みと市松模様を組み合わせた手法を取り入れたりし、オーダーメードも対応可能だという。
 過去に秋田県美術展覧会(県展)で入選した経歴があり、三種町ふるさと納税返礼品に登録されている。三種町の砂丘温泉ゆめろん、ホテル・サンルーラル大潟、道の駅協和で販売し好評だ。販売を手掛ける砂丘温泉ゆめろんのスタッフ・伊東三紀子さんは、お客さんから「細かい作業が丁寧で、奇麗な仕上がりになっている」と言われることが多く、人気のある商品という。
 及位さんは材料について「春の樹木が芽吹く直前の10日間で、樹皮の柔らかいクルミの木の枝を採取する。この時期を逃すと樹皮がひび割れて、籠編みに適さなくなる」と話す。採取した樹皮は水分を含み、カビが発生しやすいという。そのため、10カ月かけて乾燥させて、良質な材料に仕上げ保存している。
 製作に取り掛かるときは、保存してある材料を水に浸して柔らかさを戻す。籠の入り口の絞りや持ちやすさなどを考慮。10日間で完成させる。ひび割れやささくれの確認も忘れずに行う。
 くるみ籠との出合いは2013年。「グリーンツーリズムの仙北市田沢湖視察で民泊へ出向き、見つけて素晴らしいと感じた。2年後に思い出し〝よしやってみるか〞と奮起。材料探しを始めた時は、ウルシの木を間違えて切り取り、体がかぶれた」と苦い経験を話す。
 及位さんは数年前まで水稲2㌶と、ハウス3棟で野菜を栽培していたが、現在は妻の由美子さん(68)の手伝いとしてトマトやキュウリなどを栽培する。及位さんは「作るのが好きなので、農作業の合間に夢中になれることができてうれしい」と喜びを見せる。

 ▽くるみ籠工房 蔵=三種町川尻川尻昼寝下78、携帯電話090(1065)7429
次号をお楽しみに!