2020年9月2週号
花粉の無いシンテッポウユリ 市場デビュー -
盆や彼岸の花束に欠かせないといわれるシンテッポウユリ。周りに付く花粉の悩みを解消する、無花粉シンテッポウユリ「あきた清ひめ」が8月に市場デビューした。
秋田県農業試験場によると、これまで生花店などから「花粉が衣服に付くと汚れが落ちづらく、販売前に花粉のある葯を取るなどの手間がかかる」という声があったという。そこで、2012年に品種開発を始め、8年かけて育種に成功。今年3月に農林水産省に品種登録を出願し、6月に出願公表となった。
品種の特長は、小ぶりで花びらが上向きになっている形。白くてかわいらしいイメージが「清ひめ」という名前の由来となった。
現在、鹿角市で平野隆さん(61)が現地試験に取り組む。シンテッポウユリの在来種と新品種合わせて50㌃のほか、トルコギキョウやスターチスなどをハウス500坪、ソバ4・5㌶を手掛ける平野さんは、4年前に県農業試験場から話があり、試験栽培に協力している。
「市場での一般的な丈は100㌢と決まっているが、この品種は草丈が取りにくい。丈が短いと単価が低くなるので注意が必要」と話す。シンテッポウユリは葉枯病に弱いため、多いときで3日に1回の防除は欠かせないという。
あきた清ひめは無花粉ということに加え、在来種よりにおいが気にならず、クリアな白色で花びらが均一に開くという利点があるという。「栽培するシンテッポウユリの3~5割をいずれ新品種にしていきたい」と意気込む。
平野さんはJAかづの花き生産部会の監事を務め、シンテッポウユリ部会員23人も新品種の面積を増やしていく予定だ。
鹿角地域振興局農業振興普及課花き担当の大石里菜技師は、「市場デビューし、色や咲き具合が奇麗だと好評を得ている」と話し、高い時期で在来種より2割ほど高い取引がされているという。「小ぶりでかわいらしい見た目から、仏事だけでなくイベントなどにも使っていただきたい。管内は30代、40代の若手の生産者が多いので、ぜひ新品種に挑戦してもらいたい」と期待する。
育成者の一人、農業試験場野菜・花き部の横井直人主任研究員は「市場評価は今後2、3年注視していく必要があるが、この品種が話題となり県の花き生産者の所得向上につながってほしい」と話す。
次号をお楽しみに!