2021年7月2週号 Aターンで農の夢実現へ②
大震災で食の大切さ実感 - 早川航さん、有美子さん夫妻
仙台市生まれの早川航わたるさん(42)と、同市で営業の仕事をしていた妻の有美子さん(38)。2015年に有美子さんが生まれ育った鹿角市八幡平地区に移住した。
早川さん夫妻は仙台市で東日本大震災を経験。「炊き出しのおにぎりが1個千円で売っていて、ショックを受けた。お金はあるが、食べるものは無かった」という経験から農業の大切さに気付き、興味を持ったという。
そんな中、有美子さんの出産を機に夫婦でAターン。航さんは地域おこし協力隊の移住コンシェルジュとして勤務しながら、農地付きの住居を探した。
「最初は苦労したが、地元のお祭りなどに参加して地域に溶け込んだ。土地柄の良さに引かれながら、お気に入りの物件を見つけることができた」と話す。
有美子さんは子供が保育園に通うようになった18年に、専業農家を目指して動き始めた。鹿角市の「地域で学べ!農業技術研修事業」を活用し、1年間給付金を受けてトマト農家で研修。
翌年に独立し、県の「移住就業支援・フォローアップ事業」や、同市と県の「新時代を勝ち抜く!農業夢プラン応援事業」を活用し、ビニールハウスや農機具を用意した。今年はハウス5棟363坪でトマトやオクラ、葉物野菜などを、露地20㌃でサツマイモやカボチャを栽培している。
「最初は葉物野菜をやりたかったが、研修先の師匠の熱意に押され、ミニトマトをメインに栽培することにした」と振り返る。直売所に出荷するミニトマトは、子供たちがフルーツ感覚でパクパク食べられるようにするため、水分を少なめになるよう調整して栽培している。
「トマト栽培で大敵の連作障害には、特に気を付けている」と有美子さん。土作りは化成肥料をむやみに使うと土が痩せていくので、堆肥や有機肥料を多めに施用することを心掛ける。農薬はできるだけ使わずに木酢液や植物活力剤を施用し、健全な株になるよう努める。
技術の向上を目指す有美子さんと、経営人材コンサルタント業を起業して兼業農家として働く航さん。「ゆくゆくは農業できちんと生活できる農家を目標としている」と口をそろえる。
次号をお楽しみに!