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あきた版3月3週号
自社田栽培米で酒造り 耕作放棄地も解消 - 秋田銘醸㈱
 「美酒爛漫」の日本酒銘柄で知られる湯沢市大工町の秋田銘醸株式会社。2021年に自社田での酒米栽培を始め、播種から精米までを社員が手がけている。自社産米を原料に酒を製造。耕作放棄地の解消や品質第一の酒造りを実現している。
 23年は9・2㌶で「百田」「一穂積」「秋田酒こまち」を栽培。3品種とも10㌃当たり収量は約540㌔だったという。
 同社では社員2人が専業で栽培に携わる。田植えや収穫は社員7、8人で協力。専業で携わる農業生産課の菅春樹課長代理(46)は「自分たちが育てた米で酒を造れることはもちろん、農業の担い手不足や増加する耕作放棄地の問題解決に役立ちたかった」と話す。
 肥料を極力少なくし、雑味につながるタンパク質の含有量が増えないよう注意。粒が大き過ぎると精米時に割れるため、品種ごとの適正な大きさを心がける。「今年産の出来を見て、次に生かせるとこ
ろは自社栽培の利点だ」と話す。
 圃場は同市幡野地区にあり、農地中間管理機構を利用して借りている。同地区の地権者の一人・由利俊朗さん(75)は「夏の暑い日でも、社員が草刈りなどの管理をしっかりしていて感心する。今後も耕作放棄地の受け皿になってくれると、うれしい」と期待する。
 百田と一穂積は純米酒「萌稲」と純米大吟醸「環稲」、秋田酒こまちは「かおりシリーズ」の原料となる。
 萌稲は、22年7月に発売した自社栽培米を使った初の純米酒。百田には「こまち酵母スペシャル」を使い、膨らみのある飲み口に仕上げている。一穂積は「AKITA雪国酵母(UT ― 1)」で、スッキリとした後味になっている。杜氏の佐藤治製造課長(57)は「精米歩合はどちらも70%だが、酵母を変えたことで味の特徴が出た」と説明する。
 自社栽培米は安心して酒を造ることができ、愛着が湧くという。佐藤課長は「『爛漫の酒は、やっぱりおいしい』と言ってもらえる品質第一の酒を造り続ける」と意気込む。
 今年は規模を12㌶に拡大する予定だ。菅課長代理は「お世話になっている地域の役に立ちたい。地域の人とコミュニケーションを取りながら一緒に農業を盛り上げていく」と話す。
次号をお楽しみに!