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あきた版8月1週号
暑熱対策 ミスト噴出装置導入 牛のストレス軽減 - 摂津拓也さん
 湯沢市金谷の摂津拓也さん(42)は、乳用牛70頭と繁殖和牛7頭を飼養する。秋田県南部酪農業協同組合に所属し、生乳を年間約50万㌧出荷。暑熱対策として牛舎内に霧を噴出する装置「ミストユニット」を導入し、室温を下げる。暑さによる牛のストレス軽減に努め、安定した乳量の確保を実現する。
 使用する機器はマルヤマエクセル株式会社の「FCS407」。給水する配管を牛舎の壁に取り付け、ファンに噴射口を直接付ける形で牛舎全体に噴霧する。地下水をくみ上げるため水温は低く、牛舎内の室温が下がり、暑さから牛を守る。
 牛舎内が26度以上になると、5分ごとに噴霧。暑さがさらに厳しい日は、噴出する回数を増やす。ミストで牛が起きてしまう可能性が
あるため、夜間は使用していない。
 4年前に懇意にしている農機具業者から導入を勧められ、設置した。牛は体温が40度を超えた時、食欲不振と免疫力低下に陥る。食欲が低下した牛は、乳量が減少する。「牛の乳量が減ったら自分たちも食べていけない。『自分たちの食事よりも牛』の気持ちで、常に観察している」と話す。
 免疫力の低下で健康を損ない、卵子が死滅することもある。摂津さんは最も大変な仕事に分娩を挙げる。「ささいなことで親も子も命を落とす危険性がある。気温が高い日の日中に、ミストを浴びながら分娩したこともあった。無事に出産でき安堵した」と話す。
 摂津さんは朝3回、昼2回、夜4回の計9回給餌。飼料には自身が栽培する牧草を使う。室温の上昇や乾燥は、保管する牧草の品質低下を招く。「牛は敏感な生き物なので、餌の質の悪化にすぐ気付く。
おいしくないご飯を食べることで、牛にストレスがかかり健康に良くない」と説明する。
 獣医師の藤島信賢さん(59)は「拓也さんは牛に対して妥協を許さず真剣に取り組む方。ミストだけではなく、良いと思うことは積極的に取り入れている。粗飼料と濃厚飼料のバランスを考えて食欲を落とさないことと、牛舎内の温度を下げることは乳牛にとって大事」と評価する。
 摂津さんは両親と弟の4人で酪農を営む。約20年前の就農当時よりも、酪農家が減少して寂しさを感じるという。一方で「補助金は国政、輸入される飼料の高騰は国際情勢が関わってくるので、為替や政治にも関心を向けている。どんな環境でも安定した生産を続けたい」と目標を掲げる。
次号をお楽しみに!