あきた版9月1週号
秋田弁で昔語り 農業の大切さ伝える - 中川文子さん
保育所・小中学校や公民館、福祉施設など県内外各地で、秋田弁を使った民話を語っている羽後町貝沢の中川文子さん(65)。農家に生まれ育ち、農家だからこそ伝えられる「農業の大切さや楽しさ」を、昔語りを通して発信し続ける。
秋田には7千話ほどの昔話が伝わっている。中川さんのレパートリーは約300話。口演の依頼があった際は、時節や聞き手の年齢に合わせて、依頼先の地域に伝わる話を語るようにしている。「秋田の民話は陽気で明るい話が多い。わらべ歌や唱え言葉が入った話も多く、聞き手が話に入ってきやすい」と特徴を話す。
昔語りを始めたきっかけは、同町民話伝承館に勤務し、語り名人の阿部悦さんに出会ったことだった。元々、事務職員として勤務していたが、語り部が阿部さん一人だったため「語り部をやってみたらどうかと勧められて始めた」と振り返る。
現在はフリーで活動し、口演は月3、4回ほど。約1時間の口演の中では、間の取り方や声色の使い方などに工夫を凝らし、観客との掛け合いを大事にしている。中川さんは県指定無形民俗文化財「猿倉人形野中吉田人形芝居」の演じ手でもあるため、口演にはその人形芝居も取り入れているという。
中川さんは町内の女性に昔語りを教えていたことがあり、当時、同町田代地区の女性とのつなぎ役を担った阿部祥代さん(66)は「メンバーは地元の芸術祭で披露するために1年ほど習っていた。みんな、今も昔語りを楽しんでいる。中川さんはアイデアが豊富で、企画力と行動力が素晴らしい方」と評価する。
農家である中川さんは、あきた伝統野菜「貝沢ふくだち菜」を0・3 ㌃で栽培。「亡くなった父親が自家採種していたものが残っていた。
道の駅うごの開業に当たって、貝沢ふくだち菜を売り出すことになった」と話す。2019年に秋田県から伝統野菜に選定されて以降、需要が増え続けているため、栽培をどう広げていくかが課題だという。
「農業の形態は変化し続け、秋田弁は使う機会が少なくなっている。秋田の大切な産業である農業や秋田弁を残していきたい」と中川さん。「コロナが落ち着いてきたので、口演の機会が多くなってくれれば」と期待する。
次号をお楽しみに!