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2020年10月3週号 横手市リンゴ 産地復興へ歩み止めず①
平場の園地に重点 - 佐藤 清美さん
 「ある程度園地の回復にめどが付いてから譲ることができて良かった」と話すのは、横手市平鹿町醍醐の佐藤清美さん(69)。5年前、栽培技術の研修を終えて就農した息子の謙一さん(38)に経営を譲ったが、50年近くにわたる豊富な経験を生かし、今も引き続き果樹栽培に携わっている。
 佐藤さん方の経営規模は現在、リンゴ2㌶とモモ20㌃、洋ナシ40㌃ほど。9年前の豪雪の際、山奥の園地は除雪作業ができなかったことから面積を減らした。一方で平場の園地を増やし、山と平場の園地の割合が逆転したという。「栽培面積は大きい方なので、摘果や葉摘み、収穫などの作業を臨時雇用している。山あいの園地は足場が悪く作業が大変だったが、作業性が良い平場の園地が増えたことは、雇用者の安全性を確保する面でも都合が良かった」と話す。
 2011年秋に国の補助事業を利用して、倒木の撤去と修復できなかった木の伐採を行い、改植した。平場の園地40㌃分は「ふじ」から品種を変更し、「シナノスイート」や中生の「やたか」、晩生で着色系の「みしまふじ」を植栽。近年は猛暑の影響が大きく、日焼けなどによって品質が期待できないことから、早生品種の収穫時期は、モモと洋ナシの生産に力を注ぐ。
 園地の修復や改植を進める一方で、大雪への備えも整えていった。150㌢ほどの積雪が毎年あると想定し、豪雪時に折れた枝の高さなどから、樹高を以前より高くし、下枝を取り除くなど仕立て方を変更。枝が雪に深く埋まって引っ張られることを防ぐ。
 さらに、豪雪以前より支柱を多く設け、枝の雪を小まめに払い、消雪剤を早めにまくなどの作業を徹底するようになった。農業保険制度への加入では、果樹共済から農業収入の減少を補てんできる収入保険に昨年切り替えたという。
 「今は収穫量が急に減らないようバランスに気を付けて、若木が育ってから傷んだ木を少しずつ伐採して更新作業を進めている」と佐藤さん。「洋ナシは来年、他の果物に改植を予定しているし、モモも植えてから20年で植え替えしなければならないので、そろそろ考えなければ」と話す。
 自分たちができる範囲での栽培を目指していて、来年は作付面積が50㌃ほど増える予定だ。収穫した果樹のほとんどはJAに出荷するほか、佐藤さん方では贈答品の直売を手掛ける。直売をもう少し増やしたいと考えている。
 今年は、長雨と9月に入ってからの酷暑の影響のほか、降ひょうによる傷の被害が見られるが、生育はおおむね順調だという。「リンゴは10年ほどで成木になる。豪雪の時に植え替えた樹体は、実がたくさんなる時期に差し掛かるので、これからが楽しみ」と期待する。
次号をお楽しみに!