農業共済新聞

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2022年7月1週号
ICT放牧牛管理システム実証事業を活用 - 川島牧野
 鹿角市十和田大湯にある川島牧野では、県の「ICT放牧牛管理システム実証事業」を活用。衛星利用測位システム(GPS)が搭載された装置を放牧牛に付けることで、離れた場所から居場所を把握でき、管理の効率化につながっている。
 ICT放牧牛管理システムは、放牧牛に首輪型のモジュールを装着し、パソコンやスマートフォンから居場所を確認できる仕組み。15分おきに電波を受信し、居場所が分かる。実証2年目で、放牧安全祈願祭と衛生検査の日に合わせて装着した。
 同牧野では、鹿角市や小坂町の畜産農家22戸が約110頭を放牧する。標高400㍍、総面積177㌶で、山や谷が多く起伏に富んだ地形のため、草地は59㌶。牧柵が無く、牛は4㌔四方を自由に移動する。
 牧野では、けがや病気で動けない牛や敷地内から出た牛を早期に発見する必要がある。また、繁殖を目的として放牧する種付け用の雄牛「まき牛」がいないため、発情した牛を見つけて人工授精を行う。システムを導入するまで、広い牧場を監視人兼家畜人工授精師の湯瀬英克さん(72)が見回り、これら全ての管理を1人で行っていたという。
 湯瀬さんは「牧場を歩き回り、どこにいるか分からない牛を探していた。人工授精を行うことが多い朝方は霧がかかり、牛を探すのが大変だった」と話す。
 実証事業の導入に当たり、県と鹿角市、県畜産農業協同組合、県立大学、システムを取り扱う凸版印刷で「ICT放牧牛管理システム有効利用検討チーム」を立ち上げ、昨年から運用。放牧牛管理の省力化や、発見遅れによる種付け遅延などのリスク軽減が期待されている。
 放牧場には電波塔に当たるゲートウェイ基地局を2基設置。牛は群れて移動する習性から、放牧する110頭のうち28 頭にモジュールを装着した。
 「牛を探す時間や事故の発見が容易になった」と湯瀬さん。県鹿角地域振興局農業振興普及課の鈴木人志主幹は「どこの牧場も監視人は高齢化している。現システムの有効性を実証すれば普及できるのでは」と話す。
次号をお楽しみに!