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2022年10月3週号
担い手への期待を背負って - 株式会社細谷農PROJECT

 大仙市清水でトマトなどの栽培に取り組む、株式会社細谷農PROJECTの細谷亮太代表取締役社長(38)。昨年、地域の担い手として活躍が見込まれる新規就農者などを表彰する「担い手部門・未来を切り拓く新規就農の部」で、同社が「ふるさと秋田農林水産大賞」を受賞した。
 細谷社長は県外の大学を卒業後、農業とは違う分野の業種に就職。30歳で地元に戻るという両親との約束を守り帰郷した。その後、指導農業士の父・雅春さん(64)からトマトの栽培技術を学んだ。さらに県主催の次世代農業経営者ビジネス塾や、県内外の技術講習会などに積極的に参加。独立を目指し、農業経営について理解を深めた。
 2016年に就農し、18年には同社を設立。現在はハウス17棟42㌃で「りんか409」などの大玉トマトを作付け、JAや市内の大手スーパーに出荷している。細谷社長は「りんか409は大玉で味が良く、摘果作業などを効率よく行うことができる」と話す。
 同社ではトマトの栄養状態の変化を把握するため、養液栽培システムを導入。液肥濃度や灌水量を設定し、複数のハウスへ自動で液肥を供給している。さらにハウス内の環境を自動で測定・記録する「みどりモニタ」を設置。温度や湿度、土壌の肥料含有率や水分量、地温などをセンサーで感知して記録する。計測データはスマートフォンやパソコンで確認し、栽培管理に役立てている。
 トマトの作付けは3月から。6月から11月ごろまで安定した長期出荷を図る。「9月以降の収量を確保するために、6月末から7月の初めにかけて主枝更新や摘花を徹底し、10㌃当たり18㌧の収量を実現できた」と胸を張る。今年は7月と8月の大雨の影響で日照時間が少なく、その後急激に気温が高くなった。細谷社長は「収穫前に実がしぼんでしまい、収穫ができない時期があった」と振り返る。9月は台風の影響も無く好天に恵まれたため、平年の収穫量まで挽回できたという。
 安定した経営を確立するため、冬期間は寒締めホウレンソウやコマツナなどの葉物野菜を中心に多品目を栽培。現在、正社員3人とパート従業員4人で管理する。正社員は将来的な独立を目指す農業研修生。日々の作業に取り組む中で、生産から出荷までの一連の技術を習得するほか、農業経営について学んでいる。「人材育成は法人と地域産業にとって重要な課題。農業スキルの高い人を育成し、農業者を増やすことで、高齢化や担い手不足を解消し、地域活性化にもつながると考えている」と説明する。
 これまで、JA秋田おばこ広域園芸部会のグランドチャンピオン賞のほか、大仙農業元気賞など多くの賞を受賞してきた細谷社長。「良品質なトマトの生産と若手農業者の育成に力を入れ、1億円企業を目指して努力していきたい」と意気込む。
次号をお楽しみに!