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2020年12月2週号
茅葺きの古民家を農家民宿に - 小林茂和さん
 「以前から古い物や古民家に興味があった」と話す小林茂和さん(43)。神奈川県鎌倉市から秋田県羽後町田代地区に移住し、廃屋となっていた茅かや葺ぶ き屋根の古民家を農家民宿に再生させるために奮闘している。

 大学でアメリカンフットボールにいそしみ、卒業後は欧州などでプロ選手として活躍した小林さん。2018年に引退して帰国後は、今までと違う職場と自宅の往復だけの生活に物足りなさを感じたという。
 そんな中、古民家で何か始めたいという気持ちが大きくなり、東北地方を中心に物件を探した。「岩手県にある茅葺き屋根の古民家で屋根の葺き替え作業を体験し、茅葺き屋根に興味が湧いた」と話す。
 その後、茅葺き屋根の家や廃家が多く残る羽後町に目を付けた小林さんは、町役場に連絡。茅葺き屋根の再生に取り組みながら塾や書店を経営し、町会議員も務める阿部久夫さん(72)を紹介された。
 古民家を案内される中、1軒の廃家に行きつき、「傷みは激しいが、業者さんと一緒に自分も補修しようと思った」と小林さん。昨年末、鎌倉に妻と子供3人を残して移住し、今年準備を始めた。
 春には水田1・2㌶を借りて「あきたこまち」を作付け。刈り取った稲の半分は、今では少ないはさ掛けによる天日干しを行った。
 6月に物件の改修工事、8月に屋根の葺き替え作業を開始。「素人の米作りだが、近所の先輩たちに助けられて何とかものになった。古民家も、来年の農家民宿開業に向けて順調に進んでいる」と前を見据える。
 移住の手助けをした阿部さんは「彼には田舎民に無いセンスを感じる。困難でもやると決めればやり切るし、自分たちが引っ張られている」と話す。
 小林さんは「田舎には都会に無いものがたくさんあるし、人のつながりが温かい。屋根の茅や外壁の板、内壁の土と補修後は土に返るものばかり。葺き替え後は茅を堆肥にし、育った稲わらで茅を縛る縄を作るつもり」と張り切る。
 収穫した米は地元の道の駅と自身のネットショップ「古庭屋商店」(https://kobayaonline.com/)で販売。古庭屋商店では、経木やおひつなど米をおいしく食べるためのアイテムも提供する。「ここの土を使った土鍋も販売したい」と話す。
次号をお楽しみに!