2022年8月1週号
秋田鳥海りんどう 冷涼な気候生かして - 村上孝一さん
「『秋田鳥海りんどう』は日持ちするし、青の発色がとても良い」と話す由利本荘市鳥海町上川内の村上孝一さん(67)。水稲1・4㌶とリンドウ1・2㌶を栽培している。8月に収穫最盛期を迎え、より発色の良いリンドウ出荷に取り組む。
秋田鳥海りんどうは2018年に地域団体商標に登録された花きブランド。ほとんどが長野県の育成品種を利用するが、一部では鳥海山麓に自生したリンドウから改良した品種を使う。夏季も冷涼な同市鳥海地区を中心に05年に栽培が始まった。
村上さんは07年に15㌃で栽培を開始。現在は30品種を手掛け「ながの極早生」や「あきたの青」「あきたの藍」などのブルー系が7割を占める。ほかにパステル系やピンク系などの栽培に取り組む。
元々製造業に携わっていたが「定年後を考えた時に稲作だけでは生活できないと思った」と振り返る。秋田鳥海りんどうの栽培が始まったことで関心を持ち、研修会に参加して栽培を決意。「リンドウは日陰や冷涼な場所を好む。中山間で傾斜があり、日中の気温がそれほど上がらず、夜温が下がるこの地域の気候に適していた」と説明する。
移植初年は株の生育だけで収穫はない。2年目は雪が消えた3月下旬ごろに追肥を開始。1株に8本を目安に間引きし、4月末からは10日に1回病害虫防除を行って収穫を待つ。「畑の管理は苦にならない。防除と除草で奇麗に整列した畑を見ると気持ちが良い」と笑顔を見せる。
収穫最盛期は盆前で、6月下旬から11月上旬にかけて36万本をJAに出荷。長さや曲がり具合に応じて10本ずつ束ねる。「長さの規格は40㌢から90㌢までで、規格に合わせて茎をカットする。50㌢以下は手作業だが、それより長い場合は機械で処理できる」と村上さん。機械導入により少ない人手で作業ができるようになったという。
雨でリンドウがぬれている場合は、自作の乾燥機を使用。ベニヤ板とトタン板で箱型を作り、その上にすだれを敷く。ファンヒーターを稼働し、工場扇を通して温風を送って乾燥させる。乾燥後は水と薬剤が入った洗面器に根元を漬けて出荷を待つ。
JA秋田しんせい営農経済部園芸販売課の佐藤祐介さんは「りんどう部会の副部会長を務めたことがある熱心な方。畑はとても奇麗に管理されている」と話す。村上さんは今後について「後継者とリンドウ農家の育成に力を入れたい。秋田鳥海りんどうの市場規模拡大を目指していく」と意気込む。
次号をお楽しみに!