あきた版10月3週号
ユリ 心強い仲間と切磋琢磨 - 中村京子さん
「先輩方が築き上げた鹿角の花きのブランド力を、自分たちの世代もつないでいきたい」と話す鹿角市十和田大湯の中村京子さん(40)。露地70㌃、37坪のハウス2棟で花き栽培を行う。4人の子育てをしながら、パート2人を雇用して営農に励む。
手がける品目はシンテッポウユリやトルコギキョウ、スターチスなど。JAかづの花き生産部会に所属し、全量を出荷する。関東方面のほか、秋田県内や宮城県へ流通。規格外品は「大湯103号線産直センター直売所」で販売する。
実家では中高生の時から、両親が行う花き栽培を手伝っていた中村さん。結婚後に子育てとの両立を目指して新規就農し、10年目を迎えた。
シンテッポウユリは「優雅」「雷山」を栽培。2月上旬から中旬に、同JAの種苗センターで部会員らと共に播種する。5月中旬に定植し、8月下旬から
秋彼岸に向けて収穫が始まる。 蕾の先端から110㌢ほどを1本ずつ鎌で刈り取り。刈り取って残った葉が光合成することで、球根に養分が蓄えられる。
翌年は、越冬した球根から5、6本の芽が出るので3本に間引く。7月中旬から8月上旬にかけて収穫でき、これをもう一年繰り返す。主に盆用として出荷し、1年目から合わせて毎年5万本の出荷を見込む。
同JA営農販売課の海沼将人さんは「中村さんのユリは品質が良く、終盤まで数多く納品いただいた。今後の若手農家を引っ張る頼もしい方なので、引き続き支援していきたい」と期待を寄せる。
草丈の高さから強風を受けると曲がりやすく、価格が低下する。病斑や害虫にも徹底して対策するが心配は尽きない。「減収して営農を諦めるのではなく、補償を受ければ来年も続けようと糧になるのが心強い」と話し、収入保険加入準備を進めている。コロナ禍は結婚式や葬式などの縮小で需要が減少したことも大きな痛手だったという。
また、近年は収穫開始が1週間ほど早まり、単価が大幅に下がる状況に苦慮する。市場からの注文に合わせて需要期に出荷できるよ
う努めている。一方で晩生種は10月に入ってからも収穫できるようになり、手応えを感じる中村さん。同市で栽培が始まった20年前とは生育時期に変化が見られ、気象変動を見極めながら熱心に取り組む。
収穫後に長さや輪数ごとに分け束ねて水上げし、作業場にユリが並ぶ様子を見ると達成感が込み上げる。「生産者は30代40代が多いので相談しやすい。仲間の存在が何よりも心強く、恵まれていると感じる」とほほ笑む。圃場を行き来して活発に情報交換し、すぐに実践することも多い。
前年よりさらに良いものを作り、販売金額を伸ばすことを毎年目標に掲げる。「物価高騰の影響は大きいが、薬剤などを節約して病気が出てしまっては台無し。しっかりと手をかけ、喜ばれるものを作り続けたい」と張り切る。
次号をお楽しみに!