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東北版10月2週号
去勢鶏「あきたシャポン」 希少性の高さに注目 - 杉渕渉さん

 鶏舎6棟で比内地鶏を年間8800羽飼養する北秋田市増沢の杉渕渉さん(55)。雌雄鑑別時に淘汰される雄の活用を目的に、去勢鶏「あきたャポン」の生産を2014年に始めた。長期飼養で仕上げる肉は、県内外のレストラン10店舗以上で取り扱われている。

 シャポンはフランス語で去勢鶏の意味。飼養期間が8カ月と長く、冬季以外の出荷が少ないことから、希少性が高い食材とされている。
 杉渕さんが去勢鶏に関心を持ったのは20年前。「県畜産試験場の研究員から、高値で取引されるシャポンの話を聞き、比内地鶏の雄で取り組まないかと提案があった」と振り返る。雄は肉が硬く、スープなど加工品に用途が限られ、ひなの段階で処分されることが多い。杉渕さんは雄を活用するため試験場で去勢方法を学んだ。
 あきたシャポンは、4から8週齢のひなを去勢。雌の150日間に対し、210から240日間飼養する。170日目からの仕上げ期には、配合飼料に全粉乳を混ぜて給餌し、脂肪を蓄えるため柵で囲い運動を制限。11月中旬から12月の出荷時に生肉量は比内地鶏の1・5倍の3㌔になる。
 「クリーミーで柔らかく、特にムネ肉はしっとりしておいしい」と杉渕さん。昨年は50羽を卸に出荷し、一羽あたりの販売価格は比内地鶏の4倍以上になったという。
 販売を請け負う同市川井の有限会社あけぼの農園加藤吉弘代表(70)は「県
内や東京のほか、九州沖縄など10店舗以上のレストランと取引が継続し、年々受注量が増えている。取引先が品質に満足している証拠だ」と評価する。
 現在、県北部の生産者は4戸で、年間出荷数は約200羽。供給量が不足している状況だという。杉渕さんは「去勢手術は難しいが、飼養方法は仕上げ期以外雌の比内地鶏と変わらない。生産に取り組む養鶏農家が増えてくれたら」と話す。
次号をお楽しみに!